人生のどん底うつ気味のサラリーマンが主人公『金魚姫』(著・荻原浩)

2019年7月9日火曜日

荻原浩 小説

t f B! P L
丸い水槽に泳ぐ数匹の金魚


■人生のどん底から救ったのは金魚姫!?

本書は『海の見える理髪店』で直木賞を受賞した荻原浩さんが書いた、笑って泣ける物語です。

金なし、休みなし、彼女なしで、うつ気味のサラリーマンが主人公。
そんな主人公を人生のどん底から救ったのは、なんと金魚姫!?

だけど、やっぱり「金魚の身の上話は聞かないほうがいい」(荻原)か。


金魚の化身の訳あり美女と、ひと夏の運命物語

主人公・潤の勤め先はブラック企業の仏壇仏具販売店。同棲していた彼女は出て行った。

明日からの地獄の日々を思い、日曜日にうつうつと過ごしていると、祭り囃子が耳に入ってくる。腹ごしらえも兼ねて足を運び、気まぐれに金魚すくいの出店に立ち寄った。

ところが、運良く釣れた金魚の琉金を飼い始めると、いきなり美女が現れる。なんと釣れたのは、人間になったり魚に戻ったりする金魚だった。

琉金だから〝リュウ〟と名付けられた金魚姫。リュウは気が強いけど、無邪気でかわいく、時折、部屋で観ていたテレビCMの真似をしたりする。

一方、潤はリュウと暮らし始めてから死んだ人が見えるようになる。死者からその人しか知らない情報を得て訪問販売すると、営業成績がどんどん上がっていく。

リュウは前世の記憶をなくしていて、自分がなぜ現代によみがえったのかが分からずにいる。物語が進むにつれて、リュウの正体が明かされていき、彼女の記憶がよみがえっていく――。

本書では、2人の楽しそうな同居生活の描写の合間に、リュウの悲しい記憶が織り交ぜられているため、読者は薄々、リュウがなぜ琉金に姿を変えることになったのかを知っています。

しかし、物語はすんなり終わりません。

さて、二人の行く末を案じながら読み進めた皆さんは最終章、どのような光景を目にするのか――。


<見どころ・感想>

■しぐさがかわいい金魚姫

高飛車でプライドが高いリュウが、テレビを見て同世代の女の人の言葉やしぐさを一生懸命真似して、知ったかぶりをする姿がかわいらしいです。

しかも、えびせんが大好き。

■自分を捨てた恋人と再開するが…

物語の途中、自分を捨てた恋人の亜結と潤が会う場面があります。リュウとの同居生活をしている中で、読んでいてはらはら。

ただ、恋人の様子がどうもおかしい。
それは、どうしてか。その謎が分かると、ちょっぴり切ない気持ちになります。



金魚姫
金魚姫
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荻原 浩
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時代小説好きの父と、ミステリー小説好きの母の下、幼い頃から本に囲まれて育ちました。その影響もあり、私も赤川次郎さんの「三毛猫ホームズ」シリーズから推理小説が好きに。高校生の時に、毎日のようにブックオフに寄って、中古本を買いあさり夢中で読んでました。最近では、石持浅海さん、辻村深月さんも読んでいます。職業柄、勉強のため、毛色の異なる本も手にします。ブクログもやっています→https://booklog.jp/users/47744715b09cce08

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