■障がい者が職場の第一線で活躍
障がい者が職場の第一線で活躍し、会社になくてはならない存在として働いている日本理化学工業。そのために行っている様々な工夫。経営理念や福祉への取り組み、家族の思いなど。そして、同社が〝日本でいちばん大切にしたい会社〟と呼ばれるその理由とは――。
業界トップシェアまでの苦闘と葛藤
本書は、58年間、障がい者雇用を続けながら業界トップシェアを成し遂げた日本理化学工業(神奈川県川崎市)の話です。同社の主力商品を製造している作業員のほとんどは、知的障がい者であり、その半数近くは重度の障がいがあります。
今でこそ福祉への取り組みや経営姿勢で注目を浴びますが、ここに辿り着くまでには数々の苦悩と葛藤があったそうです。
その経営者の苦闘や家族の思いなどに迫ったノンフィクション作品です。
<感想>
■「どうすればできるのか」を考える
私が関心を持って読んだ箇所は、健常者の社員と障がい者が同じ職場で働くことの苦闘について書かれたところ。当初、健常者が障がい者の仕事の面倒を見るというやり方をやっていたために、常に命令する側とされる側という主従関係ができてしまったといいます。
そこでどうしたか。
「世話をされる側・施される側から、企業を支える労働者へ。知的障がいのある社員のため、彼ら理解できる仕事の段取りを丁寧に、緻密に、考えていった」
同社では障がい者を前に、「どうしてできないんだ」と考えるのではなく、「どうすればできるのか」を考えるようにしているそうです。
文字や数字の理解が難しい人のために「色合わせ」という手法を取り入れる、文字盤の時計が読めない障がい者のために工場には大きな砂時計をいくつもおいて置く、2桁以上の数を数える場合には数字が書かれた単語帳を用意する――。
それぞれの理解力や能力に合わせて作業工程を工夫することで、職場の必要不可欠な戦力となっているといいます。
例えば、健常者の社員なら15分、30分しか集中力が続かないところを、ここの障がいのある社員らは、高度な集中力を数時間継続し、その能力を発揮しています。
また、製造途中のチョークに不具合があった場合、健常者の社員には容易に気づけない、ゆがみや気泡を見つけ出します。
社長は「繁忙期や欠勤がある場合などは、健常者の社員がラインに入ることもありますが、通常は知的障がいがある社員だけに任せています。慣れない健常者の社員が入ったほうが、むしろ足手まといになるんですよ」と語っています。
職場や日常生活において、障がいのあるなしに関わらず、その人がどのようにしたら能力を発揮できるかを考えることの大切さをあらためて実感しました。
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